2021年5月30日 聖霊降臨節第2主日礼拝
説教メッセージ
週報のお知らせ欄に書きましたように、本日より出エジプト記を連続講解説教に入ります。旧約聖書では、出エジプト記の前は創世記です。創世記については、2014年9月28日の礼拝から連続講解説教に入りました。2021年1月31日創世記50章を「終わりの始まり」と題して説教しました。実に、6年4か月で創世記を説教したことになります。
本日から出エジプト記を講解説教してまいります。出エジプト記は、「新しい始まり」です。何の始まりか? 神の民の形成、イスラエル民族形成の始まりということですね。それまでは、アブラハム、イサク、ヤコブ、ヤコブの12人の子たち、ヨセフという部族集団です。定住場所がない、羊飼いの遊牧民の族長のひとりです。
1.一遊牧民の族長からイスラエル民族、そして国家形成の始まり
天地創造の神がアブラハムを選ばれて、召命ですね、旅に出るように促されます。12章1節です。75歳でした。このように神はアブラハムに呼びかけられます。
主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷、父の家を離れて、わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める、祝福の源となるように。あなたを祝福する人をわたしは祝福し、あなたを呪う者をわたしは呪う。地上の氏族はすべて、あなたによって祝福に入る。」
アブラムは、主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。
「あなたを大いなる国民とする」これが、神がアブラハムに約束された言葉です。
26章 4節 イサク契約
わたしはあなたの子孫を天の星のように増やし、これらの土地をすべてあなたの子孫に与える。地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。
48章 4節 ヤコブ契約
『あなたの子孫を繁栄させ、数を増やし、あなたを諸国民の群れとしよう。この土地をあなたに続く子孫に、永遠の所有地として与えよう。』
神と人との契約関係です。
アブラハム、イサク、ヤコブの神として啓示されます。そして、ヤコブのエジプト下り。ヤコブ一族郎党は70人。先にヨセフは奴隷として売られた。そこで神の不思議な導きでエジプトの大臣に大抜擢された。
出エジプト記は、ヨセフが亡くなり、それから400年がたったところから始まります。
聖書は、啓示の書と言われます。蔽い(ベール)がしてある。中身は分からない。神ご自身が蔽いを取り除かれる。中身を示してくださる。これが啓示です。新約聖書の最後の書はヨハネの黙示録ですが、黙示も啓示も同じです。
言葉によって、神はご自身を啓示されるのです。神の霊によって。天地創造、歴史、はじめがあり、終わりがある。終わりとは、主イエス・キリストの再臨です。それまでの歴史を人間は送っているのです。
神は、創世記から出エジプト、レビ記、民数記、申命記とそして、聖書全巻から神のみこころ、計画を啓示されておられる。神の奥義です、神秘ですね。これがわたしたちの信仰です。それは永遠不変であり、普遍的な真理なのです。以下、三つの項目に要約できます。
1.アブラハム、イサク、ヤコブの神としての神 啓示。生けるまことの神。
2.契約 アブラハム契約、ヤコブ契約、ヨセフ契約、十戒と律法→新約キリストの十字架による契約
3.選びと祝福 アブラハムを選び、イスラエル民族を選ばれた。地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。新約では永遠のいのち、神の国のいのち。キリストの十字架の血潮によって贖われた民としてのキリスト者。
1章1~5節には、ヤコブ一族郎党70人とあります。創世記46章6,7節、26~27節にはエジプトに下った一族郎党70名の名前が記されています。この70名が430年後、壮年男子だけで60万人に増えたのです。妻子を合わせると200万人を超えるでしょう。
出エジプト記12章37節
イスラエルの人々はラメセスからスコトに向けて出発した。一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。
40節
イスラエルの人々が、エジプトに住んでいた期間は四百三十年であった。
2.エジプトでの430年
ヨセフから、70名が壮年男子だけで200万に増えたのですが、増える過程について、1章6,7節に記されています。
ヨセフもその兄弟たちも、その世代の人々も皆、死んだが、イスラエルの人々は子を産み、おびただしく数を増し、ますます強くなって国中に溢れた。
このようにして、430年の年月が過ぎたのですね。
8節
そのころ、ヨセフのことを知らない新しい王が出てエジプトを支配し、国民に警告した。「イスラエル人という民は、今や、我々にとってあまりに数多く、強力になりすぎた。
抜かりなく取り扱い、これ以上の増加を食い止めよう。一度戦争が起これば、敵側に付いて我々と戦い、この国を取るかもしれない。」 エジプト人はそこで、イスラエルの人々の上に強制労働の監督を置き、重労働を課して虐待した。イスラエルの人々はファラオの物資貯蔵の町、ピトムとラメセ スを建設した。しかし、虐待されればされるほど彼らは増え広がったので、エジプト人はますますイスラエルの人々を嫌悪し、イスラエルの人々を酷使し、
粘土こね、れんが焼き、あらゆる農作業などの重労働によって彼らの生活を脅かした。彼らが従事した労働はいずれも過酷を極めた。
強制労働の監督、重労働を課して虐待、12節以下
嫌悪、酷使、生活を脅かした。過酷を極めたとあります。
奴隷の悲哀です。そこには、人権はありません。強制労働、酷使、死ぬまで働かせられた。鞭打たれ、住むところも狭く、くつろげるものではありません。逃げないように鎖に繋がれ、必要最低限の食べ物と飲む水が与えられるだけです。まさしく搾取されたのです。
この苦しみ、辛さ、奴隷の哀しみを救い、解放へと導かれる。これが出エジプト記の内容です。ここに旧約聖書と新約聖書のエッセンスがあります。神はアブラハム、イサク、ヤコブの神として、子孫であるユダヤ民族を救わずにはおれないのです。それが神の契約であり、約束だからです。
先ほど、見ましたように、アブラハム、イサク、ヤコブへの契約の言葉ですね。
12章1節、26章 4節、48章4節 キーワードは「大いなる国民とする」です。アブラハムは「諸国民の父」となるのです。17章4節
「これがあなたと結ぶ契約である。あなたは多くの国民の父となる。わたしはあなたをますます繫栄させ、諸国民の父とする」
しかし、神はアブラハムにこうも言われるのですね。創世記15章13節
「あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、400年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう」
出エジプトの出来事は、この神の言葉の成就でもあるのです。神はどのようにしてエジプトを脱出させ、解放し、乳と蜜のあふれるカナンの地に導かれるか。ここに出エジプト記とそれに続く、聖書があります。聖書全体は、今のわたしたちの歴史と信仰生活、そしてすべてに大きく関与し、影響しているのです。今から3000年から3500年以上も昔のことではないのです。啓示の書の所以です。
3.イスラエル民族の起源、神の選び
神はアブラハム、イサク、ヤコブの神として、ご自身を啓示されます。アブラハムを通して、一部族から民族へ、そして国民・国家へと変遷、導かれるのが神なのです。そこに神の永遠のご計画がある。そこに聖書信仰があります。
小さな部族を神は選ばれた。祝福、選び、神のみわざ、契約という経綸です。
さすらいのアラム人 出身 掘り出された穴、切り出された岩 イザヤ51:1
そして、モーセを指導者として選ばれた神がエジプト脱出へと導かれる。その方法とは?
これが出エジプト記の主題であり、新約聖書の主題として重なっています。
マタイによる福音書1章では、そのアブラハムの裔であるイエス・キリストを通して、ユダヤ人だけでなく、すべての人に神の祝福と永遠のいのちが与えられる。キリストの十字架の贖いへと導かれる神のご計画がここにあるのです。
これから出エジプト記を共に読み進めて参りましょう。
説教補遺
奴隷のことを考えると、アメリカ合衆国の黒人奴隷のことがまず想い起されます。
奴隷制度は、歴史上、すべての国にありました。新約聖書のローマ帝国もありました。
とくに、近代においてはアフリカ黒人が新大陸アメリカに奴隷として売られ、過酷な労働を強制させられた黒人奴隷制度のことがまず考えさせられます。
1492年 コロンブスのアメリカ大陸発見からイギリスは、アメリカ大陸に入植
1619年にオランダ商人が黒人奴隷をバージニア植民地に売ったのが最初であった。20名の黒人奴隷。
1776年5月15日 独立宣言
1861年から1865年 南北戦争
1860年のアメリカ合衆国の国勢調査では、奴隷人口は400万人に達していました。
アメリカでは、リンカーンによる奴隷解放宣言がなされました。1863年1月1日
それでも人種差別は、いまもありますね。マルチン・ルーサーキング牧師を指導者とした公民権運動があります。昨年、黒人が白人警官により不当に射殺されるという事件がありました。人種差別、ヘイトクライム。人間と自然を創造された神の愛と平和、秩序に反するものであります。