聖 書 出エジプト記1章15~22節
説 教 誰の言葉に従ったか
出エジプト記の講解説教を始めました。今日は2回目となります。前回では1章1節から14節までを説教しました。創世記からの続きで、ヤコブとその一族郎党70名がエジプトに定着するようになりました。5節にある通りです。
ユダヤ人ヨセフが大臣となりエジプトを救うのですが、世代が変わり、ヨセフのことを知らないエジプトの王が出て、イスラエルが数多くなり、強力になりすぎたために脅威を感じて、ユダヤ人を奴隷化するようになります。14節までのことです。
本日15節からは、新しい展開へと進みます。それはエジプトの王がヘブライ人の助産婦に命じた言葉から始まります。16節ですね。お読みします。
「お前たちがヘブライ人の女の出産を助けるときには、子供の性別を確かめ、男の子ならば殺し、女の子ならば生かしておけ。」
もちろん、エジプト王が直接2人の助産婦に命令をだすことはなかったでしょう。家臣を通して命令をしたのでしょうが、2人の助産婦はエジプト王の命令を守って、お産の時、助産婦としての赤ん坊を取り上げて、男の子であっても殺すことをせず、生かしていたのです。
17節
助産婦はいずれも神を畏れていたので、エジプト王が命じたとおりにはせず、男の子も生かしておいた。
エジプト王は再度、助産婦に命令します。
「どうしてこのようなことをしたのだ。お前たちは男の子を生かしているではないか。」
助産婦の答えは次の通りです。助産婦の機転ですね。
「ヘブライ人の女はエジプト人の女性とは違います。彼女たちは丈夫で、助産婦が行く前に産んでしまうのです。」
聖書は、結論として次のように記しています。20、21節です。
神はこの助産婦たちに恵みを与えられた。民は数を増し、甚だ強くなった。助産婦たちは神を畏れていたので、神は彼女たちにも子宝を恵まれた。
らちがあかず、エジプト王はついに22節の命令を布告します。
ファラオは全国民に命じた。「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。女の子は皆、生かしておけ。」
以上のことから3つのポイントで説教します。
1.赤子殺しの危機 機転
男の子を殺せとのファラオの命令は、新生児の虐殺という、いわば国家政策です。「すべての男子は死刑判決を身に受けて誕生する」と言った牧師がいました(フレットハイム)。男子がいなくなれば、数世代の内に民族は滅亡するでしょう。まさに民族消滅です。ジェノサイドです。ホロコーストでもあります。
しかし、古代エジプトにおいて、ある面エジプト文明を支えていたのは、奴隷たちでありました。苛酷な労働を強いられていた。そのうえでエジプト文明は成り立っていたのです。
ファラオの政策を実行していればいずれ奴隷がいなくなるのです。文明も崩壊します。これは自己矛盾なのです。
この赤子殺害命令はれはユダヤ民族消滅の危機です。
今の時代でもジェノサイドが行われていると言われます。先週、G7(先進国首脳会議)がイギリスで行われました。民主主義陣営のトップの会議です。一番の懸念は中国の拡大する覇権主義でした。覇権主義とは、自国の影響力拡大のために、軍事的、経済的、政治的に強大な力にものをいわせて他国に介入し、他国の主権を侵害・支配すること。その中で新疆ウイグル自治区の人権問題がG7でも論議されました。ジェノサイド(民族消滅)の訴えがあります。
イスラエル民族もかつてこのジェノサイドが行われました。ホロコーストですね。ナチスにより600万人ものユダヤ人が収容所などで殺されました。
聖書に戻りますが、エジプト王はこのジェノサイドを行おうとしたのです。しかし、助産婦は機転をもってそれを逃れたのです。
2 いのちは誰のもの?
17節
助産婦はいずれも神を畏れていたので、エジプト王が命じたとおりにはせず、男の子も生かしておいた。
21節
神はこの助産婦たちに恵みを与えられた。民は数を増し、甚だ強くなった。助産婦たちは神を畏れていたので、神は彼女たちにも子宝を恵まれた。
神への畏れがあったと記されています。
創世記において、神は天地創造の時に言われました。「産めよ、増えよ、地に満ちよ」(1章22節、28節、9章1節) 神の祝福の言葉です。いのちは神が創造されたもの。神が与えられ、神に帰るものです。神の創造の御手にあるものです。
神が祝福し、与えられたいのちを人間が奪うことではありません。簒奪ではないのです。人間のいかなる権力、組織、政治形態にあっても権力者がほしいままにする事ではないのです。それは神の領分を侵すことです。専制主義、独裁国家、軍事政権などですね。
エジプト王の言葉、赤子を殺せとの言葉は、すでに神の言葉には相いれないものです。神の創造の言葉に敵対していたのです。罪の中にいたことが分かります。
20節
神はこの助産婦たちに恵みを与えられた。民は数を増し、甚だ強くなった。助産婦たちは神を畏れていたので、神は彼女たちにも子宝を恵まれた。
3.誰の言葉に従ったか
わたしたちの周りには、いろいろな声があります。いろいろな言葉があります。毎日、テレビやインターネットで世界中の出来事が溢れています。情報ですね。その中で何を信じるか、受け入れるか。
グローバリズムということで、頭が混乱してしまうのではないでしょうか。本当に必要なニュースは、そんなにありません。
言葉もそうですね。親、友人、学校の教師の言葉があります。
情報も解釈の結果。必要な情報が流される。管理され、政府の都合のいい情報だけが流されることになる。背景には、民主主義、専制主義、国家主義、独裁国家があります。
助産婦は、神の声に聞き従ったのです。エジプト王の言葉ではありません。
わたしたちはどうでしょうか? 神の言葉に聞き従うのです。福音、グッドニュースですね。神のいのちの言葉に聞き従うのです。そこに神の約束があります。救い、平安、喜び、感謝。神様からくる祝福です。それは恵み、試練、忍耐することもあります。しかし、最後は神の御手に委ねるのです。一時的なことであきらめない、失望のままに終わらない。信じ続ける、信頼し続ける。これが信仰の勝利の秘訣です。
現実は悲しいことがあるかもしれません。辛いこと、苦しいこと、矛盾すること、失望、絶望、闇。しかし、それを超えて神の確かさ、光、救い、助けがあるのです。
4.神の計画
22節
ファラオは全国民に命じた。「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。女の子は皆、生かしておけ。」
神は、人間の思いを超えて働かれます。ナイル川に放り込めとエジプト王が命じた。そのナイル川から、神の人モーセを神はイスラエル民族を救う指導者とされるのですね。ナイル川が赤ん坊モーセの救出の舞台設定、神の救出計画の道具となるのです。
無から有を呼び起こされる神は、神の御子イエス・キリストを遣わされるのです。人間に従うよりも、神に従わなくてはなりません。そこに、まことの希望があります。
ノート
少子高齢化の真逆
中国では、一人っ子政策 30年続けてきた。少子高齢化のため3人までと変わった。
古代エジプト 他国の民族が増えることに耐えられない。新疆ウイグル自治区、
チベットの人権問題、ジェノサイド。
日本はどうでしょうか。安い労働力を求めて東南アジアから技能実習生を迎えて採用。これから20年後、日本の人口減のためGDPが大幅に減少。移民政策。
アメリカ 黒人、ヒスパニックが台頭
民主主義の国では、基本的人権の保障、平等を建て前とする。
神の国 民族を超えた社会がある。